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2023年5月25日 (木) 16:20 ~ 16:40A2-5WJWTPセミナー会場 A

Beyond 5Gに向けたSDR技術によるミリ波通信システム構築

本講演では、構造計画研究所が長年培ってきたSDR技術をベースに、令和元年度から令和4年度までの4年間取り組んできた5Gのミリ波帯に対応した無線通信システム構築について述べる。研究開発の達成目標設定として、多様な組合せによる通信品質要求が生じる5G普及期の2025年頃を見据え、ミリ波帯において通信への品質要求を95%以上満たし、かつサービスの継続性を99%以上確保した高信頼なサービス提供の実現を目指した。この実現のため、電気通信大学が発案した、低遅延・多接続の要求に応じるグラントフリー非直交多元接続による無線アクセス方式(PHLEX1)と、ミリ波の遮蔽による通信途絶を回避し大容量・高信頼の要求に応じるための複数無線局(RU)協調ビーム形成による無線アクセス方式(PHLEX2)を、構築した5G RAN上に実装し、実機にて実証を行った。その過程で我々は、ミリ波の通信方式実現の鍵となる①高度なミリ波ハイブリッドビームフォーミング技術と②複数RU協調制御技術、また、5Gに代表される、ソフトウェアによる高度な③無線物理アクセス方式の構築技術を獲得した。①の技術開発では、32(=8x4)素子アレーアンテナを用いて、アナログ制御とディジタル制御の組合せによるハイブリッドビームフォーミング技術を確立し、RUとして実機を構築した(特許4件登録済)。②ではPHLEX2に必要な上記①を備えた複数RUを、単一のDUから統合制御する技術を確立した。また、③は5G RANのオープンソース(OAI: OpenAirInterface)をベースに5G仕様を拡張実装し、PHLEX1/PHLEX2を実機にて実現したことでその技術を獲得した。確立したこれらの技術は、ミリ波活用が進むBeyond 5G時代に向け、まだ数少ない実機による実証基盤事例として、高度化する通信品質の要求に応える技術に資するものであり、ミリ波帯の実社会での活用普及に貢献する。
株式会社構造計画研究所
家 哲也 氏
2014年 3月 京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了 博士(理学)
2014年 4月 株式会社構造計画研究所 入社
       製造業向けCADアドオンシステム開発業務に従事
2016年 9月 構造物振動解析等の業務に従事
2017年 8月 IoTセンサシステム、自然言語処理システム、異常検知の研究開発に従事
2019年 8月 総務省委託研究「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」に従事