2025年5月30日 (金) 15:20 ~ 15:40B3-3WJWTPセミナー会場 B
5Gデジタルツインプラットフォームの構築と実証 〜OpenAirInterfaceベースのリアルタイム無線エミュレーション〜
先進的な無線通信システムの開発は、一般的に、研究・開発・実証といった段階を踏んで進められます。特に、実際の利用シナリオに基づいた実証実験によって、新たに開発されたシステムの性能を評価することは非常に重要です。しかし、実証実験の実施には、免許の取得、実機による検証にかかるコスト、既存システムとの干渉調整など、様々な課題が存在します。こうした課題を解決する手段として、実世界の複雑な電波伝搬特性を仮想空間上で高忠実度かつリアルタイムに再現する、エミュレーション技術を用いたデジタルツインによる評価が無線通信分野で注目を集めています。
電波伝搬特性のモデリング手法には、確率論的手法と決定論的手法の2種類があります。特に、決定論的手法に分類されるレイトレース法による伝搬路推定は、3D建物モデルや地形データを活用することで、マルチパス伝搬を詳細に再現できる点が特徴です。さらに、Beyond 5Gや6Gでの活用が期待されているミリ波やサブテラヘルツといった高周波数帯では、伝搬路推定の環境依存性が高く、サイト固有の伝搬モデルの有効性がより高くなると考えられています。
当社は、オープンソースソフトウェアであるOpenAirInterface(OAI)をベースとした5G基地局「OAIBOX」に、チャネルエミュレーション機能を拡張実装したプラットフォームを開発しました。このプラットフォームでは、無線信号にマルチパス伝搬特性をリアルタイムで重畳することが可能であり、特定のチャネル環境における5Gコア網および基地局からユーザ端末までのエンドツーエンド通信をリアルタイムで評価することができます。さらに、本プラットフォームはオープンソース実装であるため、無線アクセス網のプロトコルやコア網の機能を柔軟に変更しながら、同一チャネル条件下での比較評価を行うことも可能です。
本講演では、このプラットフォームのアーキテクチャの概要に加えて、実際に本環境を用いて行った5G無線通信のエミュレーション事例や、その評価結果についてもご紹介します。
株式会社構造計画研究所
髙谷 翔平 氏